精密検査を受ければガンの詳細が分かる


末期癌治療を正しく知る大切さ
■ 腫瘍マーカー検査
体への負担が少ない血液検査
ガンの存在を推測する血液検査。採血した血液に対して、腫瘍マーカーを投与します。あくまでもスクリーニング(ふるい分け)検査であるため、基準値を超えていたからといって、必ずしも「ガン」にかかっているというわけではありません。早期ガンが体内に存在していても、基準値を超えない場合もあります。その他の内視鏡検査や超音波検査などとの併用が好ましいです。
まず自分自身のことを知ることから始まる
ガンの疑いがあると言われたら、「すぐにでも治療を始めてほしい」と感じることもあるでしょう。
しかし、ガン治療では、治療の効果を最大限に得ることと、体への負担を最小限にすることを、同時に行わなければならないために、治療前に詳しい診断と精密検査を受け、はじめて”ガン”と告知されます。
最初に行われるのは、担当医による問診と診察です。現在の体の状態や症状について具体的な質問をされます。診断の手がかりを得るために、過去にかかった病気(病歴)や生活習慣(喫煙や飲酒、職業など)、さらに家族・血縁者がかかった病気(家族歴)などについて質問をされます。まずは、自分自身のことを知ることから始めましょう。
その後、より詳しい病態を知るために精密検査が行われます。現在、ガン診断の根拠とされている検査は、X線撮影やCT、MRI、超音波などの画像検査、腫瘍マーカー検査、遺伝子検査などがあります。
AFP (α-フェトプロテイン) 10ng/ml以下
BCA225 160U/ml以下
CA15-3 27U/ml以下
CA19-9 37U/ml以下
CA72-4 8.0U/ml以下
CA125 閉経前:40U/ml以下
男性・閉経後:35U/ml以下
CEA(がん胎児性抗原) 5.0ng/ml以下
CYFRA21-1 (シフラ21-1) 2.0ng/ml以下
NSE(神経特異エノラーゼ) 16.3ng/ml以下
PIVKA-II(ピブカ・ツー) 40mAU/ml未満
ProGRP 80pg/ml以下
PSA(前立腺特異抗原) 4.0ng/ml以下
SCC抗原(扁平上皮がん関連抗原) 1.5ng/ml以下
SLX(シリアルLex-i抗原) 38U/ml以下
SPan-1抗原(エスパン1抗原) 30U/ml以下
エラスターゼ1 300ng/ml以下

※基準値は医療機関や検査方法によって大きく異なる場合がある。
出典:祝田靖監修『病院で受ける検査と数値がわかる事典』
腫瘍マーカーの多くは、ガン以外の病気でも異常値を示すことがある。また、腫瘍マーカーのどれが異常値を示したとしても、それだけでガンが特定されることはない。また、上記以外にも腫瘍マーカーは多数存在する。


■ 内視鏡検査
前ガン病変やポリープの早期発見に
食道や胃、大腸、気管、気管支などに内視鏡を入れて消化管や気管の内腔面を直接みる検査。病変部の組織や細胞を取る「生検」や「細胞診」を行うことも可能です。内視鏡の先端部に超音波端子をつけて、管腔の壁や管腔外の病変を検査する場合もあります。検査前の飲食は禁止です。のどにスプレーや、ゲル状物を口に含み行う局所麻酔と、消化管運動を止める注射をする前処置として行います。
■ 超音波(エコー)検査
体への影響がなく、くり返しできる
超音波を発する装置を検査する臓器周辺に当て、体内の組織にぶつかってはね返ってきたエコーを映し出す画像検査。超音波は空気を通さないため、体と機械の密着度を上げるためにゼリーを塗ります。検査前の飲食は禁止です。主に腹部、頸動脈、甲状腺、乳腺、心臓、下肢動脈、下肢静脈などを調べることができます。体への影響がないため、くり返し行うことが可能です。
● 検査対象となる臓器と病気
- 肝臓・胆嚢など ・・・ 肝臓がん、肝硬変、肝血管腫、脂肪肝、肝嚢胞、胆嚢がん、胆嚢ポリープ、胆管がん、胆石など
- 膵臓 ・・・ 膵臓がん、膵炎、膵嚢胞など
- 腎臓 ・・・ 腎臓がん、腎結石、腎炎、腎嚢胞、水腎症など
- 脾臓 ・・・ 脾嚢胞、脾血管肉腫など
- 卵巣・子宮 ・・・ 卵巣がん、卵巣嚢腫、子宮がん、子宮筋腫など
- その他 ・・・ 前立腺肥大症、前立腺がん.尿管結石、副腎腫瘍、腹部大動脈瘤、腹水、リンパ節腫大など
■ 注腸検査
肛門からバリウムを注入
もともと大腸がんの有無を調べる検査ですが、胃のすぐ近くを通っている大腸にガンが広がっていないか、腹膜播種がないかなども調べられます。検査の前日に、便を少なくするために「注腸食」と呼ばれる検査食を食べて、下剤を飲みます。肛門からバリウムと空気を注入し、X線写真を撮ります。腸内をきれいにしてから行うことが重要です。
● 注腸検査を受けるときの注意事項
- 腸内を空にするため、前日から食物繊維の少ない食事(流動食など)で腸内の便の量を減らす。
- 前日夜9時以降の飲食(水・お茶は可能)は禁止。
- 下剤は決められた時間にしっかりと服用する。
- 下剤の服用により、何度かトイレに起きなくてはいけないことがある。
- 妊娠している、あるいは妊娠の可能性がある場合は、その旨を医師に伝えること。
- 別の医療機関で、最近X線検査を受けた場合は、必ず申告すること。
- 不整脈、前立腺肥大、緑内障、薬物アレルギーのある人は事前に医師に伝えること。
- 常用薬は服用してかまわないが、糖尿病の薬を服用している人は事前に医師に相談すること。
現在、数多くの腫瘍マーカーが臨床の場で使われています。ガンには多くの種類がありますが、体内に腫瘍があると、体液中にたんぱく質や酵素、ホルモンといった特殊な物質が増加します。その物質のうち、主として血液中で測定可能なものが「腫瘍マーカー」です。
ただし、腫瘍マーカーに反応する物質は、ガンが大きくなるほど体内でその量が増えますが、早期ガンではほとんど見られません。そのため、進行ガンを把握するのに使われているのが現状で、早期ガンの診断になるという意味で確立されたものは、残念ながらありません。
また、ガン以外の良性腫瘍や慢性肝障害、腎障害、呼吸器の慢性炎症、糖尿病などでも反応することがある。そのため、ガンを診断するうえでの補助的な検査や、経過観察の検査として用いられることが多いです。
そんな中、1回の採血で複数のガンを90%以上の確率で早期発見できるほど精度が高く、まったく新しい腫瘍マーカーとして注目されているガン診断法があります。国立がん研究センターを中心に国家プロジェクトとして開発が進み、食道がん、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がんなど13種類のガンを対象に実用化をめざしています。
